みなかみ’s blog

忘備録と整理のために

メモ:EERR(2014)『僕にはあげるものがないから火に飛び込むよ』

EERR(2014)『僕にはあげるものがないから火に飛び込むよ』サイジャリン

f:id:siriusehime:20160521175120j:plain

1.序論
 本書はEERR(サークル名:サイジャリン)によって描かれたラブライブファンブックの一冊である。本書は6つの作品から構成され、各章で描かれるキャラクターとその関係性は
オムニバス的ではあるものの、一貫性のある視点から各キャラクターは描写されている。一貫性については後述する。

EERRによれば本書のテーマは「アイドル」であり、アイドルとは、「もらうよりも与えるもののほうがずっと多い立場で、だからそうあろうとすることは大きなエネルギーを必要とするもので、寂しくて優しい存在なんだと思います。」(pp.58)と定義している。換言すれば、原則的にアイドルは他人に「何かを」与えるための存在であり、莫大な内的エネルギーを必須とする存在なのである。つまり、EERRの立場から見れば描かれている対象であるμ’sもアイドルである以上、彼女らの中には莫大な内的エネルギーが存在しているはずなのである。しかし、本書のタイトルの一句、「僕にはあげるものがない」はEERRのアイドル定義とは矛盾しているのである。
 
 それでは、EERRがμ’sの構成員の性質を、矛盾した文句で表現したことにはどのような意味合いがあるのだろうか。この矛盾には、EERRのμ’s観が包摂され、本書の一貫性にも大きく関係すると筆者は考える。それではこの矛盾は個々の作品でどのような形でテーマ化され、描写されているのだろうか。本書が出版された時点でのEERRのμ’s観と作品の意図を明らかにするために、個々の作品の内容とこの矛盾を照らし合わせ、検討する。

2.本書の構成
 序章で先述した通り、本書は以下の六章から構成される作品である。

 a.僕にはあげるものがないから火に飛び込むよ―たった一つの冴えたやり方
 b.愛と呼ぶ—ほんとうの在り処
 c.新しい世界―小鳥の巣
d.魔女のお菓子―とうとう言わない
 e.花冠の姫君―たった一つの冴えたやり方
 f.この世界に生きて―あの日夢見たのは
 本論を展開するにあたって、まず登場人物と各チャプターの内容を整理したい。f:id:siriusehime:20160521174933p:plain

       図1 本作品における各キャラクターの登場状況

 本作品にはμ’sの構成員すべてが登場する。この中でも中心的な存在となるのは、にこと真姫である。図表一から、メインキャラクターとして登場する比重が高いのがこの二人であるからである。ただし、この二人の関係性を発展させる重要な舞台装置(以下媒介者)としてEERRが希を登場させることにも注意する必要がある。希は小道具としてトルコのお菓子であるロクㇺを用い、にこと真姫の関係性に変化をもたらすのである。

 ロクムのことを希は「素直になれるお菓子」(pp.26)と称し、にこと絵里に手渡しているが、実際は「裏切りのお菓子」であると白状している。裏切りのお菓子というのは、ナルニア国物語で、白い魔女がロクㇺを使い登場人物の一人を誘惑し、主人公一行を裏切らせるというエピソードが元である。

(ここまででエターなったのでちょこちょこ書き加えて来月までに書ききろうと思う)