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みなかみ’s blog

忘備録と整理のために

文章をうまくなるためには?-斉藤孝が勧める書く力の身につけ方

 文章をたくさん書きたい。でもなぜ書けないのかわからない。そんなつらい気持ちが自分を覆っていたので、手元にあった斉藤孝(2007)『原稿用紙10枚を書く力』だいわ文庫、を読んでみた。するといろいろ知見があったので、文章練習の実践の意味も込めて記事を書いてみた。

 斉藤によれば、文章をうまくなるためには、好きなテーマでとにかくたくさん量を書く必要がある。そのために、書きたいテーマを大まかに考えながら、本から材料を引き出す。そしてこれを3つにグルーピングし、全体像を把握しやすいレジュメに落とし込む。そして、3つの要素の間に論理をつくり、文章を書きあげる準備を整えてしまう。こうして準備ができたらガンガン書いていくとよいらしい。これだけではいまいちイメージがつかみにくいと思うので、これから順に説明していく。

 

①文章はどうすればうまくなるのか。 

 それでは、文章を書けるようになるためにはどうすればいいのか。それは、量を書くことらしい。このとき、文章を書けないのに量を書けるわけないだろう、と疑問を持つだろうけど、至極まともな反論です。しかし、いくらバッティングのやり方の本を読んでも、バッティング練習をしなければうまくならないように、書くことも書かないとうまくならないと考えると、受け入れられる主張になるのではないでしょうか。つまり、うまくなるための方法論の本を読むよりも、書く中でうまくなるほうが、効率がいいのかもしれない。

 じゃあ具体的に、どのくらいの文章を、どうやって文章を書く練習をすればいいのかという疑問がわく。斉藤によれば、だいだい原稿用紙10枚分、つまり約4000字を、好きなテーマで書き、とにかく文章を生産することが、上達につながるとのこと。4000字といえば、レポートの平均的な分量。何か特定のテーマについて文章を書く上で、かなり妥当な文字数である。斉藤によれば、4000字程度の文章を自由に書けるようになれば、それ以上の分量を書くことが要求されても、この分量の文章を組み合わせることでかなり楽に書けるようになるとのこと。つまり、モジュールを作っておいて、それを組み合わせるという考え方。テーマはとにかく、書けそうな好きなテーマで書くことが重要らしい。なぜなら、この練習は、文章を書く上での心的ハードルを下げることが肝要だから。すなわち、たくさん書いて心的ハードルを下げることで、よりたくさんの文章を書く余裕が生まれる。だから、せめてテーマは好きなもので書いたほうが書くことにとっつきやすくなるのではないか、ということ。

 すなわち、気楽な気持ちでたくさん書いて文章を書いて、たくさん文章を書くことに慣れていきましょうね、ということ。しかし、これだけの考え方では文章をうまく書けるようにはならないらしい。なぜなら、このままだと散逸した情報をめちゃめちゃに組み合わせてただただ長ったらしい文章を書くだけになる可能性もあるからだ。これを見越してか、斉藤は具体的な手順にも言及している。

 

②どうやって文章を書くか。

 斉藤は事前準備の重要性を強調している。長い文章をかくためには、それ相応の準備が必要とのこと。それでは、どのような準備か。それは、重要だと思う部分・面白いと思う部分に線を引き、そこから三つのキーセンテンスを取り出すこと。斉藤は文章を書くためには材料となる本を読まないといけないと前提を立て、書きたいテーマを漠然と意識した、材料集めのための「こなす読書」を推奨している。つまり、何を書きたいかなんとなく考えながら本を読むと、そのテーマに引っかかる部分が出てくる。そこを見つけつつ本を読み、書くための材料をためる読書をし、そこから3つのキーセンテンスにしぼっていこうということだ。

斉藤は三色ボールペンを用いた材料探しを斉藤は推奨している。たとえば、赤色は個人的に面白いと思ったところ、青色はとても重要だと感じた部分、緑色はそれなりに重要だと思った部分という風に各色の役割を決め、線を引きながら読み進めていくとよいらしい。なるほど、こうすれば後から取り出したい部分が一目でわかるし、線を引いた部分の意味合いも一目瞭然になる。かなり効果が高そうである。ただし、公共図書館から借りた本などは、事前に面白い部分が含まれたページに付箋を貼っておき、印刷してから線を引くなどの別のやり方を取らないといけないだろう。こうして取り出した部分から、特に面白い部分を三つにグルーピングする。なぜ三つにグルーピングするのか。

 斉藤によれば、4000字の文章を効果的に書く上で含めることができる要素は3つくらいがちょうどいいらしい。それ以上になると内容過剰になり文章が複雑化し、それ以下だと足りなくなるらしい。自分が面白い部分を3つキーコンセプト化し、文章を書くことで適度に複雑な、独創性のあるまとまった文章になるとのこと。確かに、書きたいことをあれこれ放り込んで無駄に複雑化し読みづらい文章や、内容が薄く全く面白くない文章があることを考えれば、適切な指摘なのかもしれない。ただし、必ずしも3つの文節を書き出さなければならないというわけではなく、複数の引用部分を3つにグルーピング化するというやり方もありとのこと。つまり、言いたいことを3つにまとめておくということが重要みたいである。ここから、3つキーセンテンスを引き出すために、三色ペンを用いた「こなす読書」の必要性を斉藤は取り上げた。それでは、こうして引き出した三つのキーセンテンスをどのように構成していけばいいのだろうか。

 

③骨組みを作る

 斉藤は構成するための練習として、レジュメを作ることを推奨する。レジュメはゼミ発表などで、読み手・聞き手に発表内容を概観させるために作成する。つまり、読み手が発表の全体像を把握するためのレジュメを、文章作りに応用するのである。いわゆるアウトライン作成である。書きたい内容のアウトライン化は、書き手が書く文章の全体像を把握するのに役立ってくれる。たとえば、文章を書いていてなんとなく構想ができたので書き出してみた経験はないだろうか。しかし、こういう時に書いた文章は途中でまとまりがなくなり、読んでいても方向性がつかめない迷路のような文章になることがほとんどである。ちなみに筆者はしばしばこの状態になり、書くことをあきらめて不貞寝することが多い。こうした、書くことがつらくなる状況を避けるためにも、水先案内人としての、レジュメによるアウトライン化は必要なのだろう。

 このとき、3要素間の論理構造を考えておくことも必須である。ただレジュメを作ると、単に各要素を列挙した材料としてのレジュメにとどまってしまう危険性がある。これを避けるために斉藤は3要素を図示し、各要素間の論理構造を考えることを勧める。つまり、3要素の論理構造を視覚的に把握できるようにしておくことで、書きたい論理構造が見えてくるのである。そして、この論理のつなげ方が、文章のオリジナリティにつながるらしい。

 例えばうどんのおいしさを伝えたい文章を書くとする。要素を、①麺のコシが強いほうがいい、②汁はだしで作ったほうがいい。③上に乗せるのはとり天が最高、という3要素に絞る。このとき、①・②・③の相互関係を考える。①と②は、汁が濃すぎると味ばかりに気が散ってしまい、麺のコシの重要性に気を配れなくなるので、だし汁のほうがいいという論理、②と③はとり天に濃い汁が絡むととり天がしょっぱくなってしまうのでだし汁くらいの濃さがちょうどいいという論理、①と③は、とり天は食感が柔らかいので、コシの食感を引き立ててくれる。そして、これを引き立てるためにも麺のコシは強いほうがいいという論理、というそれぞれのつながりを挙げることができるだろう。ここから、麺のコシととり天の食感を引き立てるうえで濃い汁はそれらの良さをダメにしてしまう。だからだし汁を使うほうがいい。そして、とり天は柔らかいので麺のコシを引き立ててくれる。この食感の差を最大化するためにも麺のコシは強いほうがいい。つまり、この三つを組み合わせたうどんは美味である、という論理構造を導き出すことができるだろう。なおこの例えは筆者の好みである。この3つの要素の論理は人によって変わってくるだろう。この論理構造こそが、文章のオリジナリティにつながるとのことである。

このように、まず引き出した材料を3つのキーセンテンスに分けた上でレジュメ化し、全体像を把握できるようにする。そして3つのキーセンテンスの論理構造を設定し、書きたい文章を構造化することが、長い文章を書く上で重要になるのである。

 

以上のように、長い文章を書くための心的ハードルを下げる方法と、具体的な書くための」技法を書いてきた。これを読んで、読んでいる本から三つだけ要素を抜き出すなんて無理、なんて人もいるだろう。もっともである。しかしよく考えてほしい。なんとなく読み始めた本で内容が頭に残っているのはどれだけだろうか。おそらくかなり少ないだろう。しかも、これを使って文章を書けと言われれば、もう死にたくなるはずである。このようにテクニカルな読み方・書き方を用いることで、少なくともアウトプットが可能になるし、3つの要素は頭に残るはず、と考えるとかなり効果的なメソッドではないだろうか。斉藤はこうしたトレーニングを積むことで、情報を整理する癖がつき、文章がうまくなるのみならず、頭の中で考える訓練にもなると、このメソッドの効用を強調している。ここまで読んでもなお、苦しんで経験を積んで、上手な文章を書く練習をしろという人もいるかもしれないが、自分は楽できることなら楽したい人間なのだ。だから、比較的楽に練習になりそうなこの練習法に乗っかってみようと思う。アニメや映画を使って、アウトプットをするのが手軽らしいので、とりあえずそこから始めよう。

ちなみに筆者はとり天うどんが一番好きなうどんである。次点は阪急そばのフライドポテトうどんである。(4085字)